※「この記事は、筆者個人の経験に基づいて書かれています。専門家による医学的・心理学的なアドバイスではありません。また、読み進めていくうちに過去の辛い事を思いだし気分が悪くなりそうな時には、読むのをすぐに中止してくださいね。」
「この言葉だけは、絶対に子供に言わない」。私がそう強く決めたのは、子供時代の親との関係で深く悩んだ経験があったからです。
言葉には良くも悪くも大きな力があり、特に親から子への言葉は、その子の自己肯定感や、時には人生そのものにも影響を与えかねないことを、私は身をもって体験しました。
この記事では、私が自分の子育てで意識的に避けてきた3つの具体的な言葉と、なぜそれらの言葉を避ける必要があったと感じたのか、そしてその背景にある「負の連鎖を断ち切りたい」という切実な想いについてお話しします。
過去の経験は変えられなくても、未来の関わり方は選んでいけるはずです。
私のささやかな経験が、今まさに子育てで悩んだり、頑張っているあなたの心に少しでも寄り添うことができたら、これ以上の喜びはありません。
この記事が、あなたの子育てにおける日々の言葉選びについて、改めて考えるきっかけとなったり、お子様の自己肯定感を大切にする上で何かの参考になれば嬉しいです。
親との関係で悩んだ私が「言葉の影響力」に気づいたきっかけ
物心ついた頃から、私は母から繰り返し言われ続けた言葉がありました。
「あなたが男だったら、こんな事にはならなかったのに」
なぜお母さんはそんなことを言うのだろうと、幼い私はその言葉の意味も理由も分からないまま、ただただ疑問と、言葉にならないモヤモヤとした感情を抱えていました。
成長するにつれて、母の口から断片的にその「理由」が語られるようになりました。父が男の子を切望していたこと。そして、最初に生まれてきた私が女の子だったことが、父が家庭に対して愛情を注げず、外に向かって様々な問題を起こす原因になったのだ・・と。
だから、もし私が男の子だったら、父は家庭に対して愛情を向け、外に向かって様々な問題を起こす事にはならなかったはずだというのです。
母の言葉の真意を知ったとき、私は自分が望まれて生まれてきたわけではなかったのかもしれない、という感覚に襲われました。そして、「私が私であること」が、まるで家族の不幸の原因であるかのように感じられ、自分の存在意義そのものが分からなくなっていったのです。
この経験は、私にとって「親の言葉」がいかに子供の心を深く傷つけ、存在価値を揺るがし、その後の人生における「生きづらさ」に繋がる可能性があるかを、身をもって知る強烈な体験となりました。この体験が「言葉の影響力」に気づき、自分の子育てでは同じような過ちを繰り返したくないと心に誓う大きなきっかけとなったように思います。
もちろん、そう決意したからといって、すぐに理想の親子関係が築けたわけではありません。親から受けた子育てしか知らなかった私にとって、実際に子供とどう関われば良いのかは、また別の大きな課題でした。
私が自分の子育てで【意識的に避けた】3つの言葉とその理由
ひとつ前でお話ししたように、子供時代の経験から「親の言葉」が持つ影響力の大きさを痛感した私は、自分の子育てでは「絶対に言わない」と心に決めた言葉がいくつかありました。
それは、言われた側の心に深い傷を残し、自己肯定感を根底から揺るがしかねない、特に破壊力が強いと私が感じた言葉たちです。
ここでは、「絶対に言わない」と意識して避けた3つの言葉と、その理由をお話ししたいと思います。
言葉1:「あなたなんか産まなければ良かった」― 存在を否定する重い一言
これは、子供自身の「存在そのもの」を否定する、最も残酷な言葉の一つだと私は思います。
たとえ親が感情的になって、つい口にしてしまった言葉だとしても、言われた子供は「自分は生まれてこなければよかったんだ」「自分には価値がないんだ」と存在意義そのものに疑問を抱いてしまうかもしれません。
私が子供の頃に感じた「自分の存在意義がわからない」という苦しみを、自分の子供たちには絶対に味わわせたくない。その一心で、この言葉だけは、どんな状況であっても決して口にしないと固く決めていました。
言葉2:「〇〇だったら良かった」― 子供のありのままを否定する危険性
「あなたが男の子だったら良かったのに」「もっとおとなしい子だったら良かったのに」…。
これもまた、子供の性別や個性といった、その子の「ありのまま」を否定する言葉だと感じます。子供は「今のままの自分ではダメなんだ」「親の望む姿でなければ愛されないんだ」と感じ、自分らしさを押し殺したり、常に親の顔色をうかがったりするようになるかもしれません。
私が母から言われ続けた「あなたが男だったら…」という言葉がそうであったように、子供が自分自身の根幹を肯定できなくなる危険性があるように思います。
だからこそ、子供の性別や生まれ持った個性を他の何かと比較したり、否定したりするような言葉は避けるように努めました。
言葉3:「(兄弟姉妹)は~のに」― 比較が生む劣等感と無力感
「お兄ちゃんはできるのに、どうしてあなたはできないの?」「妹はもっと頑張っているよ」。兄弟姉妹や他の子と比較する言葉も、子供の心を深く傷つけることがあるように思います。
比較されることで、子供は常に誰かと比べられていると感じ、劣等感を抱きやすくなるのではないでしょうか。また、「自分なりに頑張っていること」を認めてもらえず、「どうせ頑張っても無駄だ」と無力感を感じてしまうかもしれません。
このように、自身の経験から、これらの言葉が持つ破壊力を知っていたため、これらの言葉を避ける努力はしても、当時の私が常に子供たちの気持ちを最優先して子育てをできたかというと、そうではありませんでした。
当時の私は、まだ親との関係で悩んでいた頃からの生きづらさを強く持っていましたし、そもそも親から受け継いだやり方しか知らなかったのです。そのため、特定の言葉は避けても、別の言い方や態度で、子供たちを傷つけてしまったことも、残念ながらありました。
「負の連鎖」を断ち切りたかったから ― 私が子供に願ったこと
前の項目でお話ししたように、私が意識的に避けていた言葉があった一方で、当時の私には未熟な部分も多く、子供たちを他の形で傷つけてしまったこともありました。
子育ては本当に試行錯誤の連続で、「これで良かったのだろうか」と悩む日も少なくありませんでした。それでも、いや、そうした葛藤があったからこそ、私の心の中心には常に消えない強い想いがありました。
それは、「私で、自分が経験したような、親の言葉で存在意義に悩み続ける苦しみの連鎖を断ち切るんだ」ということでした。私自身が経験した、親の言葉によって自分の存在価値を見失い、「なぜ自分は生まれてきたんだろう」と悩み続けるような苦しみ。そんな思いを、自分の子供たちには絶対に経験してほしくなかった。これこそが、私がどんなに未熟で不器用でも、子育てにおいて諦めなかった最大の理由だと感じています。
私が子供たちに心から願ったのは、ただ一つ。『なぜ自分は生まれてきたんだろう』と、自分の存在そのものに疑問符が付くような人生だけは歩んでほしくないという思いです。
親の期待や都合に振り回されたり、誰かと比べられたりすることなく、ただ、ありのままの存在として、心穏やかに生きていってほしい。そんな、当たり前のようでいて、私にとっては切実な願いだったのです。
そのために、完璧にはできなくても、言葉を選び、関わり方を模索し続けること。それが、私にとって「負の連鎖」を断ち切るための、具体的な方法だったように思います。
子育てで「言わない言葉」を意識し続けた私が、今伝えたいこと
子供たちが成長し、手がかかる日々の子育てが一段落した今、改めて当時を振り返っています。
親との関係で悩み、その経験からくる「生きづらさ」を抱えながらの親業は、決して平坦な道のりではありませんでした。
「あんな言葉さえ使わなければ大丈夫」と、かつてはそう信じようとした時期もありましたが、現実はもっと複雑でした。自分の未熟さゆえに、子供たちを傷つけ、「負の連鎖」の影に怯えた瞬間は、一度や二度ではありません。
それでも、「自分の代で、あの苦しみの連鎖を断ち切る」「子供たちには、自分の存在を疑うような人生を送ってほしくない」その一心で、不器用ながらも言葉を意識し、自分自身と向き合い続けてきました。
きっと、子供たちの心の中には、私の未熟さによる傷が、小さく残っているかもしれない。その可能性からは、目をそらすことはできません。けれど、同時にこうも思うのです。私が悩み、葛藤し、それでも諦めずに言葉を意識し続けたこと、そして「連鎖を断ち切る」と願い続けたこと。その姿勢そのものが、たとえ時間はかかっても、子供たちとの関係性の中に、そして私自身の「生きづらさ」の改善の中に、何かしらのポジティブな変化を生み出してくれたのではないか、と。
今、もしあなたが、かつての私のように、ご自身の経験からくる「生きづらさ」を抱えながら、子育てに奮闘しているとしたら、伝えたいことがあります。
完璧じゃなくていい。失敗したっていい。そのたびに自分を責めるのではなく、「どうしたら次は、もう少し良い関わり方ができるだろう?」と、ほんの少しでも前を向くこと。
そして何より、「負の連鎖を断ち切りたい」「子供には自分と同じ思いをさせたくない」と願う、その真摯な気持ちそのものが、何よりも尊いのだと思います。
言葉の力は、本当に大きい。だからこそ、意識して選びたいと私は思います。
その小さな選択の積み重ねが、いつかあなたと、あなたのお子さんの未来を、少しずつでも温かいものに変えていくと、私は信じています。
まとめ
今回は、私自身の「親との関係で悩んだ経験」を基に、自分の子育てで意識的に避けてきた3つの言葉と、その背景にある想いについてお話ししました。
子供の存在そのものを否定する言葉、ありのままの姿を受け入れない言葉、他者と比較する言葉は、子供の心を深く傷つけ、自己肯定感を損なう可能性があるように思います。
たとえ親自身が過去に傷つき、「生きづらさ」を抱えていたとしても、「負の連鎖を断ち切りたい」と願い、意識的に言葉を選ぶことで、子供との未来は変えていけるかもしれません。
完璧な子育てはありませんが、自身の経験と向き合い、試行錯誤し続けること自体に大きな価値があるのではないでしょうか。もし今、あなたが子育てにおいて、過去の経験からくる悩みや困難を感じているとしても、どうか自分を責めすぎないでください。
完璧な親を目指す必要はありません。「子供にとって、より良い関わり方をしたい」と願うその気持ちが、何よりも大切だと感じています。
焦らず、一歩ずつでも、ご自身のペースで進んでいけば大丈夫です。時には立ち止まったり、後退したりするように感じても、向き合い続ける限り、必ず変化は訪れると、私は自身の経験を通して感じています。
あなたの心が、今日よりも少しでも軽くなることを願っています。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。